2025年10月15日 経済学部
【ゲスト講演者】
株式会社伊藤園
マーケティング本部 緑茶ブランドグループ ブランドマネジャー
吉田 達也 様(1999年経済学部経済学科卒)
【講義の概要】
2025年10月7日、株式会社伊藤園のマーケティング本部に所属されている吉田達也さんをゲストにお招きして、特別講義が行われました。
株式会社伊藤園(以下、伊藤園)は、「自然・健康・安全・おいしさ・良いデザイン」の五原則を軸に、お客様第一主義を掲げるお茶の総合メーカーです。主力事業はリーフ・ドリンク事業で全体の約9割を占め、タリーズコーヒーやチチヤスなどもグループ会社に持ちます。特徴的なのは、自社工場を持たない「ファブレス経営」により、変化に強く柔軟な生産体制を実現している点です。
伊藤園は、世界で初めて缶入り緑茶やホット用ペットボトルを開発した企業でもあります。特に「お~いお茶」は、発売当初は苦戦しましたが、商品名を改めたことで一気に人気を拡大し、現在では世界ギネス記録にも登録されるほどのブランドへと成長しました。ペットボトルに「光からお茶を守る工夫」を施すなど、品質へのこだわりも徹底されています。
また、茶殻を100%再利用する「茶殻リサイクルシステム」など、環境負荷低減にも積極的に取り組んでいます。さらに、急須でお茶を淹れる文化を広げる「ティーテイスター制度」や「お〜いお茶新俳句大賞」など、食育・文化活動にも力を入れています。こうした活動を通じて、日本の伝統文化とともにお茶の価値を世界へ発信していることが分かりました。
近年では、世界47か国で販売を展開しており、アメリカでは緑茶が「健康や集中力を高める飲み物」として人気を集めています。2024年には、MLBの大谷翔平選手をグローバルアンバサダーに起用し、世界60紙で新聞広告を展開するなど、これまで広告に慎重だった伊藤園にとって大きな挑戦を行いました。大谷選手が試合前に「お~いお茶」を飲むというエピソードを紹介しながら、企業として「日本の緑茶を世界へ広げる」強い決意を感じました。
質疑応答では、「自社工場を持たない理由」や「お茶以外のドリンク事業の拡大方針」、「伝統と新しい挑戦のバランス」などについて質問が寄せられました。吉田達也さんは、「不易流行」という言葉を挙げ、お茶の品質を守りつつ、飲み方や売り方を時代に合わせて変える姿勢が重要だと語りました。また、「営業で良い成績を出す人は細部まで気を配れる人」「マーケティングに向いているのは信念を持ち、自分の意思を曲げない人」といった言葉が印象的でした。伊藤園では営業を通して現場を知り、その後マーケティングや企画に進むというキャリア形成の仕組みも紹介され、社員の自主性を尊重する企業文化がうかがえました。
【受講した感想】
今回の講義を通して、伊藤園が単なる飲料メーカーではなく、「お茶」という文化を軸に新しい価値を創造している企業であると強く感じました。特に、伝統を守りながらも世界に挑戦する姿勢や、後発企業でありながらユニークさで勝負する戦略に感銘を受けました。また、広告塔としての大谷選手の起用は、企業の新たな一歩を象徴しており、今後の伊藤園がどのように世界市場で成長していくのか非常に楽しみです。
就職活動では、「自分が何を大切にして働きたいのか」を明確にすることが大切だと感じました。吉田達也さんのように、会社の魅力や仕事の意義を自分の言葉で語れる姿が印象的で、私も将来、胸を張って自分の選んだ道を話せるようになりたいと思いました。